こども編集部        

「こども編集部」を支えるおとなたち。Vol.3は、空間デザイナー・インテリアコーディネーターで、「フォント」や「インテリア」、「自然素材」など、身近にあるモノを新しい視点で見る方法を教えてくれる<みーすけ>です。

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「模様替え」が趣味の女の子

父が設計士だったので、小さい頃から、「家」について考えることは日常の一部でした。5歳のときに実家を新築したのだけれど、そのとき与えられた自分の部屋は、何もかもが気に入らなかった。ファンシーな柄の入った壁紙も、水玉のカーテンも嫌でたまらなくて、せめて家具の配置は好きにしたいと、父や兄に手伝ってもらって毎月のように模様替えをしていました。映画を見ていてもインテリアが気になって、「私ならこうするな」と妄想したり。それだけで楽しかった。

しぜんと家の内装、インテリアをなりわいにしたいと思うようになったけれど、文系志向だったので、理工学系ではなく、芸術系の大学の建築学科に進むことに。この選択は、私にとっては正解でした。「建築」って、建物という器を作るだけが仕事ではなくて、建物の中の「人の暮らし」をデザインする仕事でもある。そこに集う人たちのストーリーを、いくつもいくつも組み立てて、そこがどんな場所であるべきか考え、形にしていく。たくさんの人を前に話すことは得意ではないけど、「人」に興味があり、一対一で深く話を聴き込むことが好きな私にとっては、最高におもしろい仕事です。

知らないオッサン達が教えてくれた

母方の伯父が変わった人で、自宅で商売をしていたんだけれど、日本中から伯父のファンみたいな人たちが集まってくるんです。子供の頃、家に遊びに行ったら、こたつで知らないオッサンが寝てたことも。みんなでウダウダして、あーだこーだと勝手なことを言ってるんだけど、そういうのを見て「なーんや、大人ってこんなのもアリなんか」と思って、なんとなく視野が広がった。わりと厳しい母に育てられたので、親が望むレールに乗るべきなのかな、と漠然と思っていたけど、世の中っていろんな価値観の人がいるんだなーと気づけたことは貴重だった。ジャズや映画が好きな伯父夫婦から受けた影響も大きいかな。

今、仕事で若いスタッフ達と関わっていて、「質問できない子が多いな」と感じることがあります。隣で一生懸命作業してくれているんだけど、疑問点が生じていても、こちらに質問しないでひたすらネットで調べている。どうして質問しないんだろう? 分からないことは恥ずかしいことじゃないし、一言聞けばすぐに解決するのに。「分からない」と素直に聞けることも才能なのにな、と。

年配の人間って、いろんなことを教えるためにいるようなもの。「こども編集部」に関わってくれるこども達は、ここに集まる大人から、素敵なところをちょっとずつかじったらいいやんって思います。いろんな価値観をついばむ場所。私自身も、それで救われたから。

「ちょっと教えて」「手を貸して」と言える場所

かく言う私も、今では3人の母親としてようやく周りを見る余裕も出てきたけれど、長女が乳幼児の頃、家事育児のワンオペ状態で一度精神が崩壊しかけました。夫と長女と3人で移動中の車内で爆発し、大泣きで車のシートを蹴りまくり、危うく事故りそうになりながらようやく、いっぱいいっぱいなんだと助けを求めることができた。それからは夫をはじめ市のファミリーサポートや、面倒見のいいご近所さんにもたびたび助けてもらいながら、なんとか今までやってこられました。

生きていれば、いろんな人に迷惑かけるのが当たり前。開き直って、私はそう思います。ここに集まるおとなサポーターは、それぞれいろんな価値観を持った人たちだけど、「こども達が安心して暮らせたらいいな、自分をさらけ出せる場所にしたいな」という想いは同じ。「こども編集部」が、おとな同士、こども同士、おとなとこども、みんなが支え合い、学びあえる場所になることが理想です。

私は「建築・インテリア」に限らず、身の回りのデザインにある「フォント」や、日常に着るもの、使うものの「素材」に目を向けて「自分はこれが好きだな」と感じたり、見慣れたものの見方が変わるような体験をしたりできるワークショップを提供できたらいいな、と思っています。お楽しみに。

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