こども編集部

【編集部員レポ】2月5日哲学対話

哲学を専攻している大学生のそうくんに今回もお越しいただき、３回目の哲学対話WSを行いました。

〈哲学対話にルールはあるの？〉

対話を始める前に必ず話してくれる哲学の心得から。
・何を言ってもいい
・否定しない
・問いかけるように
・話がまとまらなくてもいい
・意見が変わってもいい
・聞いているだけでもいい
・分からなくなってもいい
哲学の堅いイメージが少しずつ崩れてきませんか。
哲学対話では、周りのお友達と意見が違っても良いし、話しているうちに意見が変わっても良いし、意見を言わず考えているだけでも良いのです。
哲学とは想像よりもっと、柔軟で自由度の高いものかもしれません。

〈テーマを決める〉

この日は「正義とは何か」をテーマに話し合いました。
いきなり正義について語るのは大人とっても難しいのではないでしょうか。
そこでトロッコ問題をはじめとするいろいろな例え話を使って正義について紐解いていきました。

〈トロッコ問題について話し合う〉

トロッコ問題とはフィリッパ・フットというイギリスの哲学者が１９６７年に発表した「中絶問題と二重結果論」という論文に収められた例題の一つをもとに、１９７６年ジュディス・ジャービス・トムソンによりトロッコ問題として類型化され提示され５０年経った今でも多くの人の関心を集めています。
「暴走したトロッコがこの先二方に分かれる線路の上を走っていてあなたはそのトロッコの操縦レバーを握っている。
進む先には５人の作業員、もう一方には一人の作業員が居る。
レバーを切り替えなければ５人、切り替えれば１人轢いてしまう。
どちらを選択するか」という問題です。
編集部員はこの問いに対し人物のバックグラウンドを探る質問をすることから始まります。
二つの回答から選ぶのではなく、問題の欠陥に対する持論が展開されているところから始まる、という哲学対話ならではの面白さがありました。
独自の解答がたくさん生まれ、対話が更に膨らんでいきました。
トロッコ問題の派生として「太った人を線路に落としてトロッコを止める」などの問題もあります。
この問いでも提示された答えとは違ったたくさんの意見が生まれ、自己犠牲的な考えの子、倫理的な感性が豊かな子など、それぞれの哲学を感じることができました。

〈正義について深く語り合う〉

WSの後半では功利主義や帰結主義という思想の解説をもとに更に直接的「正義とは何か」の問いにアプローチしていきました。
功利主義　功利を第一、幸福の追求や社会全体の利益を最善とする考え方で、簡単にいうと「より多くの人の幸せや利益を追求する」数字の大きさに重きを置いた思想です。
帰結主義　ある行動から生じた結果を配慮しそれが道徳的かどうか判断すること。例として「数より個人的背景や状況を加味して決定を行う」などがあります。

正義とは何かを、具体的に説明してくれた部員たちの意見です。
「あるお菓子の工場が潰されるとしたら、そのお菓子が食べたい人は良くない思いをするけど、もし環境問題があったとしたら地球にとってはそれは正義だと捉えられる。」
「バイキンマンは悪だとされているけど、バイキンマンからしたらアンパンマンが悪である」
ここでそうくんから「正義の反対は本当に悪なのか」「正義の反対とは何なのか」という問いが。
“正義とは（功利主義に基づくと）多数派のこと” “なら正義の反対は少数派” “でもその少数派が掲げているのも正義” などの過程を経て “正義の反対はもう一つの正義” という結論に落ち着きました。

〈哲学対話を終えて〉

さて、こうして議論が一区切りついたところでこの日の哲学対話は終わりました。
１時間弱の哲学の対話でここまで正義について深掘り、回収までに至りました。
積極的に話を広げてくれる子、新たに問題を提起してくれる子、それらを繋げてくれるこ、じっと話を吸収している子。色々な形がありますが全て哲学です。
少し難しいテーマだったけれど、それぞれが「正義」についての考えが深まったのではないでしょうか。
是非日常にも哲学を取り入れ、さまざまなものの見方を身につけてみてください。

（編集部員まひろ）

【参考】

https://gentosha-go.com/articles/-/43233

https://dic.nicovideo.jp/a/%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%B3%E5%95%8F%E9%A1%8C

https://www.pasonatech.co.jp/workstyle/column/detail.html?p=8320

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%B3%E5%95%8F%E9%A1%8C